2010年12月28日火曜日

景気と雇用の改善なき1年 予算組み替えに失敗し財政効果も円高で台なし


2010.12.27

民主党政権下のこの1年間で、景気、雇用、デフレ、為替、財政など経済はどう動いたのか。

まず「景気」について内閣府が発表している景気動向指数(一致指標)で見ると、今年1月に99・2であったが、直近の10月では100・8とあまり代わり映えがしない。今年の8月頃に良くなり、その後に悪くなって悪化傾向が続いているので、気分は良くない。

次に、菅政権が売りにしている「雇用」である。就業者数(季節調整済)は、1月に5489万人であったが、10月は5493万人とこれもほぼ横ばいだ。雇 用、雇用という割には成果が上がっていない。完全失業率は、1月は4・9%であったが、3月に5・0%と5%台に乗ると、そのまま大台を維持して、10月 は5・1%である。これもまったく改善していない。

物価については、相変わらずデフレが続いている。消費者物価指数(除く生鮮食品)の 対前年同月比でみて、1月はマイナス1・3%、その後も9月までマイナス1%台であった。10月はマイナス0・6%とやや改善したが、これがこれからどう なるのか。ただし、改善といっても、いまだにマイナスの世界であり、デフレ脱却にはほど遠い。

このコラムで強調したが、デフレも円高もそれぞれ「モノ」と「他の通貨(ドルなど)」に対して相対的に「円」の量が少ない時に起こる現象で、根っこは円の過小供給である。

対ドルの為替レートは、1月の初めは93円台をつけた。その後、4、5月に一時円安に揺り戻したときもあるが、円高基調は続き、10月末には80円すれす れで史上最高値に紙一重までいった。今は、若干落ち着いて83円程度に戻しているが、為替レートの今後の動向は、物価とともに、金融政策次第である。

こうした日本経済の結果、財政はどうなったのか。

自公政権での09年度予算(当初ベース)は歳出計88・5兆円、歳入は税収46・1兆円、公債金33・3兆円、その他9・1兆円だった。

一方、民主党政権の10年度予算は歳出計92・3兆円、歳入は税収37・4兆円、公債金44・3兆円、その他10・6兆円。民主党政権になって、新しい政 策を従来の予算を組み替えで財源捻出して行うと言っていたが、予算組み替えはできなかった。その結果、歳出が3・8兆円膨らみ、その一方で、デフレで税収 が8・7兆円減少し、公債依存は11兆円も大きくなった。

ただし、この財政拡大によって、民主党は意図していないが、結果としてケイン ズ政策を行ったことになり、景気下支えの効果があったはずだ。しかし、十分な金融緩和が同時に行われなかったために、マンデル=フレミング理論が予想した とおり、円高になり輸出減となったため、財政による景気刺激効果は減殺されただろう。(嘉悦大教授、元内閣参事官・高橋洋一)

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