2009年9月14日月曜日

<帰国支援事業>生活保護申請の日系人に手続き強制 袋井市

<帰国支援事業>生活保護申請の日系人に手続き強制 袋井市

9月14日2時31分配信 毎日新聞
 不景気で失業して生活保護費の支給を申請した静岡県袋井市の日系ブラジル人に対し、市が、国の帰国支援制度を利用するとの誓約書を書かせていたことが分かった。制度は、日系人失業者が国内での再就職を断念して帰国する場合、国が家族分も含め帰国支援金を支給しており、今回の市の対応は帰国を促す措置だ。毎日新聞の取材を受けた市は「生活保護の支給と帰国支援は別もの。日本で生活したいという本人の意思を踏みにじる行為」と誤りを認め、誓約書の撤回と本人への謝罪を約束した。【小玉沙織】

 誓約書を書かされたのは、息子(5)と2人で暮らす日系ブラジル人3世の20代の女性。約10年前に来日し、7月中旬に携帯電話の組み立て工場を解雇され、8月31日に同市へ生活保護の支給を申請した。

 女性や市によると、申請の際、女性は職員から「(日系人離職者に対する)帰国支援事業の手続きも行うと約束しなければ、生活保護の申請は受け付けられない」と言われた。女性は「まだ日本で仕事がしたい」と訴えたが、職員は「あなたは運転免許もないし、日本語も話せないので、100%仕事は見つからない。(帰国支援金の)30万円をもらって帰ったほうがいい」と主張した。女性は生活保護を申請するとともに、職員から渡されたA4判の白い紙に「帰国支援の手続きをする」などとポルトガル語で書いてサインしたうえ、右人さし指で指印を押したという。

 取材に対し、市しあわせ推進課は当初、「生活保護の支給については、年金や諸手当など他の方法で受給できるものがあれば優先するという国からの通達(生活保護の「他法他施策の活用」)があり、帰国支援事業の利用はそれに該当する」と説明。その後、「生活保護は日本で困窮しながら暮らす人が対象で、帰国支援金を他法他施策の活用に当たるとするのは、通達の誤った解釈だった」と回答した。

 女性は「ブラジルにいるのは、年老いた両親と病気の妹。帰っても働く余裕はなく、日本で働くしかないのに、誓約書まで書かされるとは」と話した。

 ◇日系人離職者に対する帰国支援事業

 南米諸国に国籍がある日系人失業者のうち、日本での再就職をあきらめ、母国へ帰国する本人に30万円、扶養家族に1人20万円を国が支給する。不況を受けた緊急支援で4月から受け付けを始めた。当初、国は支援金の目的外使用を防ぐため、支援金受給者は「当分の間」再入国を認めないとしていたが、日系人らから「もう来るなということか」との批判を受け、政府は5月に「3年をめどとする」ことを明らかにした。

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最終更新:9月14日6時18分

毎日新聞

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