本部や会議が乱立…指揮系統、官僚も「不明」
東日本大震災への対応で、政府全体を指揮する「司令塔」が依然として見えてこない。 政府内には「本部」や「会議」が乱立気味のうえ、菅首相はブレーンとして内閣官房参与を次々と任命するなど肥大化が続いている。菅首相がどう指導力を発揮するのか、正念場となる。
◆「何の会議」◆
「出席してても『これは何の会議だっけ』と思う」
国土交通省幹部は震災以来、対策本部などの会議に忙殺される官僚の気持ちをこう代弁した。
震災から1か月後の今、政府内では、「会議が多過ぎる」「指揮系統や役割分担がハッキリしない」など、「組織乱立」への不満が充満している。各組織の構成や仕事の内容を整理するために政府が作成した内部資料は十数ページに及ぶ。
対策本部は閣僚級だけで五つ。被災者受け入れ支援については、地震・津波なら「被災者生活支援特別対策本部」、原発事故による退避なら「原子力被 災者生活支援チーム」に分かれる。省庁ごとの「縦割り」でなく、複数省庁による「横割り」組織の乱立には、「責任の所在がわかりにくくなり、かえって非効 率だ」(政府筋)との指摘もある。
ある経済官庁幹部は、「ナントカ会議が多すぎて政府全体の優先順位が見えない。自民党政権時代は、党の部会で政治家同士が議論し合い、その場で役 人に指示があったので、政治家の問題意識が顕在化して動きやすかった」と話す。民主党は、内閣と党の「政策決定の一元化」を掲げ、震災対応も党より政府主 導で進んでおり、意思決定プロセスがわかりにくい。
震災1か月となる11日を機に、首相はさらに有識者らによる「復興構想会議」や閣僚級の「復興本部」(仮称)などを設置する方針だが、西岡参院議長は7日の記者会見で「会議が踊っている」と酷評した。
◆参与膨張◆
政府の責任の所在をさらに見えにくくしているのが、首相のブレーンとなる内閣官房参与の存在だ。震災後、首相は6人を任命。現在は総勢15人と過去最多だ。
「あいつらは、正確な情報を伝えてこない。あいつらは、何か情報を隠している」
菅首相は、しばしば周辺に「あいつら」への疑心暗鬼をあらわにする。東電や原子力安全・保安院、原子力安全委員会のことだ。首相は連日のように参 与を呼んで「あいつらとは違う視点のセカンドオピニオンを得る」のだという。このため、首相は参与との面会には官僚を同席させないことが多い。一部の参与 は、東電にある統合本部にも詰め、日米両政府の連絡調整会議にも出席。官僚からは「どういう権限で出席しているのか」との不満が漏れる。
そんな首相に先月27日に会った政治学者の山口二郎北大教授はこう伝えた。
「外部の専門家を使うのはいいが、情報がランダムに入ってくるだけでは逆に混乱する」
一方、参与側にも「個別の意見では採用されない」として、民間スタッフによる発言力を強めるための「参与会議」創設を模索する動きもあり、政府内の意思決定ラインは複雑を極めている。(政治部 吉村隆平、鎌田秀男)
(2011年4月10日14時53分 読売新聞)
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