炉心溶融で漏出する物質―危険なのはヨウ素、ストロンチウム
原子力発電所の損壊では、比較的影響の小さい物質から、比較的大きな物資まで、さまざまな放射性物質が漏出する可能性がある。
非営利団体「放射線と公共健康プロジェクト」のジョセフ・マンガノ事務局長によると、ウランを高熱で分裂させる過程で100以上の新たな化学物質ができる。完全な炉心溶融(メルトダウン)で漏出する物質には、窒素16、トリチウム、クリプトンなど、比較的毒性の低い放射性ガスもある。こうしたガスは軽く、 急速に拡散する傾向があり、人体への危険はほとんどないとフロリダ州立大学の原子物理学者、カービィ・ケンパー博士は語った。
放射性同位体窒素16は急速に放射性崩壊し、安定した酸素になる。クリプトンも非常に軽く、大気に漏出後、急速に拡散する。
トリチウムは低エネルギーで半減期(放射性原子核の半分が崩壊するのにかかる時間)が12年だ。崩壊すると、安定したヘリウムになる。
より危険なのは、吸入、口からの摂取、皮膚からの吸収で体内に入り込む。原子炉の炉心が完全に溶解すれば、ウランその他重金属など、極めて危険な放射性物質の多くが格納容器の底に落ちて大気に漏出しない。そのため、原子力災害チームが除去しなくてはならなくなる。
さらに心配なのは、砂の粒子の4分の1ほどの粒子となって漏出する放射性元素。たとえば、ヨウ素131、ストロンチウム90、セシウム137だ。特に危険性が高いものが多い。ヨウ素など人体が自然に使う物質と似ており、簡単に人体組織に取り込まれる。
米環境保護局(EPA)によると、放射性ヨウ素は環境によっては大気中や水中で急速に拡散する。ただ、ヨウ素131の半減期は8日と短く、数カ月で完全に崩壊する。
放射性ヨウ素は口からあるいは吸入により簡単に体内に入り込む恐れがある。牛が食べる草に付着し、牛乳を通じて人体に入る可能性もある。葉物野菜に付着、あるいは海水魚や淡水魚に蓄積し、それを人が食べることもあるとEPAは説明している。
放射性同位体ストロンチウム90の半減期は29.1年。化学的にはカルシウムのような動きをするため、骨や歯に蓄積しがちだ。
たとえばチェルノブイリ原発事故では、大量のストロンチウム90が環境中に漏出し、当時のソ連、欧州北部、その他地域に堆積した。
ストロンチウム90は主に食品や水を通じて体内に入る。摂取すると骨の癌や白血病の原因となるといわれている。
セシウム137は半減期が30年で、全面的な炉心溶融で漏出するもう一つの危険な物質だ。食品や水から、ちりの吸い込みを通じて摂取される。摂取により癌のリスクが高まる。
ただ、日本ではチェルノブイリ事故後のような大規模環境汚染の可能性は小さいとケンパー博士は語っている(詳細は「チェルノブイリ事故後の大規模環境汚染の可能性少ない=日本の地震で専門家」に)。
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