2011年3月27日日曜日

13台の非常用ディーゼル発電機はなぜ機能しなかったのか?

TOEICとは関係のない話題ですが、私が日ごろから興味を持っている問題ですので、書かずにいられません。

非 常用ディーゼル発電機が機能しなくなった原因が、(1)津波による浸水で発電機そのものがダメになったのか、(2)冷却用海水ポンプ故障によりディーゼル 発電機が高温トリップし再起動できなくなったのか, (3)配線および制御系統が海水でダメになったのかが不明です。原因によって今後の対策が違ってきますので、明確な説明がほしいです。 また、女川原発は無事で、なぜ福島第一がダメだったのかも知りたいです。東電から明確な説明がなされてないような気がします。

以下に今回のトラブルの経緯を説明します。

福 島第一原子力発電所は、地震により緊急停止しました。外部からの電源もなくなったので、非常用ディーゼル発電機が作動しましたが、一時間くらいで止まった ようです。電源がないので、すべてのポンプが使えず、冷却水を燃料棒に供給できなくなったようです。現在、消防車を使って懸命の海水注入作業が続けられて いますが、炉内の圧力に負けてなかなか海水が炉内に注水できないようで、約4メートルの燃料集合体の半分くらいしか水位が維持されていないようです。

ジルカロイでできた被覆管の上部が冷却されませんので高温になり水蒸気と反応し水素を発生、1号機と3号機で水素爆発により建屋が吹き飛びました。2号機でも爆発がありサプレションプール付近で損傷が発生したのではないかと報告されています。

4号機は定検中で燃料は燃料プールに移動されていましたが、プールの循環ポンプや冷却装置が動いていないので、プールの温度が上昇、蒸発、水位低下し、集合体の上部が浸水してない可能性があります。火災が発生していますが、これも水素爆発による火災の可能性もあります。

こ れら一連のトラブルは、すべて電源喪失に起因しています。福島第一原発には13台の非常用ディーゼル発電機が設置されていますが、これらのディーゼル発電 機が機能していれば、電気によって各種ポンプを作動させて炉心に冷却水を送ることができたはずです。消防車の送水圧力は高くないので、現在苦労しているの ですが、電源があれば本来の注水用のポンプを回して高圧で注水できるので、何の問題もなく注水ができたはずです。

この13台の非常用ディーゼル発電機がすべて作動しなくなった原因について東電、原子力保安院とも十分な説明をしていないと思います。

(1)考えられるのは、津波によって非常用ディーゼル発電機が水没して故障してしまった。

(2) 非常用ディーゼル発電機を冷却するための海水ポンプが津波でやられたとの情報もありますので、冷却水がなくなり、ディーゼル発電機の温度が上昇、高温ト リップしたかもしれません。この場合は、消防車を使って、海水をディーゼル発電機に送ることで、トリップした発電機を再稼働可能と思います。それとも、一 度高温トリップすると、再稼働できないのでしょうか?素人なのでわかりません。

(3)配線・制御系統が津波で破壊され、ディーゼル発電機 は無事だが電気を駆動系に送れない。あるいは発電機も配線・制御系も両方やらててしまった。発電機だけがだめであれば、外から発電機を持ってきて系統に繋 ぐこともできるはずだが、いままでのところ発電機を外部から持ってきているとの報道はないので、配線が海水でやられ電気を作っても駆動系(注入ポンプ)に 送れない状態になっているのかもしれない。

津波は想定された事象であり、設計段階で、非常用ディーゼル発電機が海水にぬれないよう密閉された部屋に配置する、配線・制御系がやられないようにする、冷却用海水ポンプを守る等の設計配慮がなされていたはずです。

13台すべてが故障したことが信じられません。1~6号機で、3台のディーゼル発電機が動いていれば、1台の発電機で交互に2つの原子炉に電源供給すれば、全原子炉を安全に停止状態に持っていくことができたのではないでしょうか。

13 台はタービン建屋の地下にあると報道されています。タービン建屋は海に面していますので、津波の影響をもろに受けたようです。設計時の想定津波は5.7 メートルと報道されていますが、この想定津波を大きく超える津波にすべて水没した思われます。また、タービン建屋はいわゆる「安全関連機器」ではありませ んので、海水に対する密閉性がそれほどなかったのかもしれません。地下にあるということは、上の階から水が浸入すれば、確実に浸水します。素人の後知恵か もしれませんが、3台だけ、別の設計思想で、原子炉建屋の中に設置しておけばどうだったのでしょうか。

東北電力の女川原発は福島第一と同 様なマークI型の沸騰水型の原子炉です。女川原発も海岸のそばにあり、今回の地震と津波の影響をもろに受けたはずです。事実、女川地区は壊滅的な津波の被 害がでています。なぜ女川原発は無事で、福島第一原発の非常用ディーゼル発電機はやられてしまったのでしょうか?

今回のトラブルは水平展開されますので、日本および世界の原発のディーゼル発電機の総点検、設計変更、追加電源の設置が行われるでしょう。

既存の原発においては、高台に追加のディーゼル発電機、または他の種類の発電機を設置する必要があるかもしれません。耐震要求も満たした堅固なものにする必要もありますので、相当な追加投資になります。

新規の原発プロジェクトにも影響しますので、世界の新規原発の設置に遅れが生じるでしょう。
原発に対する反対気運も強くなるでしょう。

世界で最も技術力が高いといわれる日本の原発で発生したこの問題の影響は計り知れません。原子力の安全神話は完全に否定されてしまいました。今後は科学者がいくら原子力の安全を説明しても誰も聞いてくれないでしょう。

東 京電力が払う賠償金は相当なものになるでしょう。非難住民、関東の農家への賠償金、廃炉の費用は想像を超える規模になります。普通の企業であれば間違いな く倒産です。東電は原子力ビジネスから撤退するかもしれません。東通原発は中止の可能性があります。原発ビジネスはもはや一つの企業が手におえるものでは なくなりました。原子力を続けたいなら政府の経営参画が必要かもしれません。

非常用ディーゼル発電機が数台でも機能していれば何の問題もなかったのです。「どうだい世界最大級の地震でも原発は安全だったよ。」と世界に宣伝することができたのに。本当に残念です

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