2009年7月31日金曜日

わずか7カ月でとかくうわさの筆頭株主との業務提携を解消したホッコク。その得失は? - 08/10/03 | 10:16

わずか7カ月でとかくうわさの筆頭株主との業務提携を解消したホッコク。その得失は? - 08/10/03 | 10:16

 オーナーの高齢化によりFC店舗の閉鎖が続き、経営再建中のラーメンチェーン・ホッコクは、この1年間、株主異動、増資、業務提携、資産売却、M&Aなどなど“イベント”が相次いでいる。ついに8月下旬には筆頭株主との業務提携を解消した。一連の動きがホッコクに何をもたらしたのか検証する。

 発端は昨年9月27日の株式譲渡。創業者・青池保氏など創業一族の保有株27%超が不動産開発・投資の都市綜研インベストバンク(以下都市綜研。ただし株式の名義の大半はティエス・アドバイザーズ、現筆頭株主)に渡った。都市綜研は、統一協会との関係がうわさされている会社だが、老人ホーム建設、経営の関連で、当時飲食会社との提携を模索していた。

 都市綜研が大株主になることで潤ったのは創業一族でホッコクではない。事業再編のためのカネは乏しい。そこで、横浜銀行OBが代表を務めるファンド、みなとみらいキャピタル(以下みなとみらい)を都市綜研から紹介され、11月7日にみなとみらいを引受先とする第三者増資を実施、約9億円を調達した。この時点でみなとみらいは「非上場の親会社等」となったわけだが、その1カ月後の12月7日にホッコクは「第三者割当による新株式発行に関する調査報告のお知らせについて」というリリースを出す。なんと、少なくともチェーン再建までは安定株主と思っていたみなとみらいが、増資当日に外国籍企業を含む4社に一部株式を転売していたという内容だった。ホッコク自身その事実に驚くが、時すでに遅し。購入した4社すべてが名義書換をしたわけではないので、確たることはわからないが、相当数の株式が市場に流れたのではないか、とホッコクは見ている(名義書換もあったため、親会社等に該当するのは現在に至るまで都市綜研)。
 
 同時期、やはり都市綜研が 大株主の経営コンサルタント会社、日本エル・シー・エー<4798>の第三者増資でも似たような話があった。引受先はみなとみらい他数社だったが、みなと みらいについては「今後の保有方針等について合意が得られなかった」(07年12月12日付リリース)ため、みなとみらい分の新株式発行は失権した。ホッコクの調査報告が影響したと見て間違いないだろう。

 紹介されたファンドに煮え湯を飲まされたのだから、警戒感が出てきてもよさそうなものだが、逆に年が明けた1月28日には都市綜研との業務提携を発表する。分野は飲食と不動産。ラーメンは、コンサルタント(何を隠そう日本エル・シー・エー)を入れて再建中だが、ラーメンに限定せずに事業領域を広げたい、という考えがホッコクにはあった。一方、都市綜研の子会社・銀嶺食品工業(福島県)は「地パン」(小麦以外の穀物をも原料とする健康パン)を製造している。まずはこれを販売することにした。不動産は以前から所有するビル3棟を賃貸しているに過ぎないが、都市綜研の不動産投資ノウハウを活用してリスクを取ることにする。すでに前年12月には税理士で都市綜研副社長だった吉田泰昌氏が転籍してホッコク取締役に就任、さらに不動産の専門家も1人出向(その後転籍)しており、人的関係も深まった(吉田氏は08年4月1日に社長昇格)。

 今期に入ってから業務面での動きが急加速する。都市綜研のつてで、4月に売上高2億円強、営業利益2500万円のそば居酒屋チェーン(5店舗)を負債なしの5000万円で買収。翌5月には、東京・日本橋に所有していたホッコク室町ビルを同地域を再開発中の三井不動産<8801>に28億円強で売却(売却益約24億円)。同じ5月に日本エル・シー・エーの外食コンサルティング子会社(ホッコクの コンサル先、売上高16億円超、営業利益3億円弱)を16億円で買収、といった具合。そして、8月には銀嶺食品の第三者増資に応じて7000万円を出資 し、50%弱保有の筆頭株主となった。製販一体で管理しないと販売価格が下げられないというのが、その理由。この結果、飲食分野で都市綜研と提携する理由がなくなった。不動産投資について言えば、今年に入ってから市況が悪化し、飲食本業のホッコクが手を出せるような状況ではない。つまり、銀嶺食品をグループ化した時点で都市綜研との提携の実体がなくなって解消合意となったわけだ。

 都市綜研とのかかわりをまとめると、次のようになる。
1 9億円の資金調達のお膳立て
2 そば居酒屋チェーン買収
3 保有資産の高値売却(転籍社員が関与することで売却額が5割ほど上昇した)
4 外食コンサルティング会社買収
5 食品で健康にかかわる商材(地パン)の確保

  2と3はプラスと見ていいが副作用があったものも多い。1については、前述のように株式の第3者への流出が起きている。4では、監査法人によりのれん償却 期間を20年から5年へ短縮させられたため、しばらくは損益計算書上の利益を計上できない可能性がある(8月12日の減額修正はこれが主因)。また、ビル 売却益の過半を使ってしまったため、ビルの代替資産を購入するには借入金を増やす必要がある(代替資産を購入しないと圧縮記帳による節税を享受できな い)。5は、まだ日本橋人形町に1店舗を出しただけで、どう育つか育たないか未知数だ。何より重いのは、株式上場時の事業である製麺から撤退、不動産投資 会社が親会社等になったことで、4月1日に上場するジャスダックにより「不適当な合併等」に当たるとされ、上場猶予期間入りとなったことだ。ホッコクは2012年3月までに2期連続黒字を計上したうえで、上場審査に準じる審査を受けることになる。

 もう一つ厄介な問題は、ほかならぬ都市綜研の保有株。業務提携が終了した以上、都市綜研が大株主である必要はない。というより、都市綜研ホッコクにカネを貼り付けておくことが難しくなっている。説明するまでもなく、不動産投資事業は、きわめて難しい局面にある。都市綜研の08年3月末貸借対照表を見ると、総資産214億円に対し130億円が販売用不動産と仕掛不動産。現預金と売掛金の合計は約15億円しかない。放っておけば、ホッコクにとって好ましからぬ先にまとまった株式が流れる恐れもある。とりあえず、9月の固定価格取引による自己株取得で35万株を都市綜研から取得した模様だ。それでも残る保有株数は300万株以上あり、すべてを自己株取得で対応するというわけにはいかないだろう。

  もしも保有比率を20%未満にできれば、「不適当な合併等」の実体がなくなり、上場猶予期間から外れる可能性も出てくる。が、本業であるラーメンチェーン 再建、新規事業軌道化は、それとは別問題。景況が悪化する中、特徴のない外食は淘汰の波にさらされている。飲食に回帰すると決めた以上、数字で結果を出す ことが求められている。
(筒井幹雄 =東洋経済オンライン)

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